この総合写真展には毎年たくさんの写真作品が応募されてきます。その中で勝ち残ってきた入選作品は、写真上達をめざす方々にとって基本的な表現力を備えた、とても良いお手本ともいえるでしょう。ただ昨今、撮影技術は平均的に高くなった一方、独自の視点による被写体の発見やその表現方法においては、残念ながら個性的な作品がいささか減ったようにも思えます。
言い方を替えれば「上手だけれど、どこかで見たような写真」が多くなった、という印象でしょうか。優れた写真表現には基礎的な撮影技術と表現力に加えて、あなたにしか撮れないオリジナリティーも大切です。そんな思いから、今回は特に個性的な作品をピックアップしてご紹介したいと考えました。ご一緒にこれらの作品から〝あなただけの写真作品を生み出す〟ためのヒントを探してみましょう。総合写真展 審査員板見 浩史先生

意表を突く生き物の一瞬を狙う

動物写真のジャンルにおいても、その動物〝らしく〟ただお行儀よく写っているだけでは面白くありません。むしろその動物の本質は、意外な表情やポーズを見せたときにこそ垣間見えることが多いものです。そしてそれがまさにその作品の持つ〝旨味〟として見る人の心に印象深く残るもの。たくさん撮った写真の中からも、セレクトの段階で外してしまうこともあるので、再チェックしてみたいもの。もちろんピント外れや露出の過不足はNGなのは言うまでもないことですが。

奥田 満さんの作品
「ちょっと休憩」
見る人の〝意外&共感〟を呼ぶポーズ
四六時中、観客の目にさらされている動物のストレスもたいへんなもの。たまには気を抜いて好きな格好で寝ていたいのでしょう。このシロクマもまさにそんな状態。雪原を堂々と歩き回るイメージを持っていた人には拍子抜けしそう意外なこのポーズ。しかしそれでも、動物ならではのストレスに思いが及ぶと、我が身につまされて今度は共感に変わります。堂々とした〝らしい〟ポーズより、こっちの方がいつまでも心に残る写真となりますね。
森 保さんの作品
「戯れ」
動物に人間社会の縮図を見る
澄ましたフラミンゴの群れにからはあまり共感は生まれませんが、混乱と騒動の中からは人はたやすく自らの分身を見出すことができます。「ちょっとー!ヒトの背中の上でケンカしないでくれるかな~」と訴えているかのような表情の一羽に、理不尽な迷惑をかけられた経験のある人なら素直に感情移入できることでしょう。フラミンゴの優雅な姿を見た事しかない人には、この鳥の本質をあらためて知らされたかもしれません。
鈴木憲市さんの作品
「青空と黒柴」
ホッコリ可愛い愛犬のポートレート
まれに見るペット犬の素晴らしいポートレートです。遠くを見つめる眼差しのりりしさ。まさに「少年よ大志を抱け」とでも言いたげな気持が伝わってきそう。上部の青空と下のウインドに映る青空がくっきり描写されたことで、美しくどこかホッコリとした雰囲気の肖像写真に仕上がりました。動物写真のお約束事である眼のキャッチライトは、もちろんきれいに入り、赤い首輪が青空に映えてとても良い色彩効果を上げています。
高橋一夫さんの作品
「サギの舞い」
サギが一瞬見せたポーズを写し止める
アオサギが羽繕いした一瞬でしょうか。非対称の見慣れない不思議なポーズを見逃すことなく写し止め、個性的な作品に仕上げています。また、蓮池の中での撮影とみえて、足元に白いハスの花もあしらわれているところが、この上ないアクセントになっていてユニークさを際立たせます。黒バックにスタジオでのライティングを加えたような完成度の高さからも、鳥撮影に対する作者の熟練度の高さが証明されているように思いました。

掲載した作品は、第29回総合写真展の入賞作品から、解説上の参考例として板見浩史先生に任意で選出していただいたものです。
作者の皆様には、この場を通じて厚く御礼申し上げます。