この総合写真展には毎年たくさんの応募作品が応募されてきます。大きく分けると「自然風景(草花も含む)」「動物や小さな生き物」「都会や人工的な風景」「人物のスナップやポートレート」など。さまざまな個性の審査員の眼を経て勝ち残ってきた入選作品は、写真上達をめざす方々にとって基本的な表現力を備えたとても良いお手本ともいえます。ああこんな写真を撮ってみたいなあ、自分だったらこんなふうに撮りたい…など、ただ眺めるのではなく自分の興味と関心に引き寄せて鑑賞・分析することによって、あなたの写真表現力をさらに高めてくれるに違いありません。ご一緒にこれらの作品から上達と入選のためのヒントを勉強していきましょう。総合写真展 審査員板見 浩史先生

撮影手法による色彩のアレンジ

色彩効果の活用には、いままでご紹介したさまざまな方法がありますが、写真ならではの技法で色彩を際立たせるテクニックもあります。流し撮りによって被写体の背景の「色彩を混ぜる」、望遠レンズの圧縮効果で「色を重ねる」、暗い背景から逆光で「“虹”を浮き出させる」、花火の色と形をカメラの動きで「アートに変える」など、今まで使わなかった技法で新しい表現にチャレンジしてみるのも楽しいと思います。

平尾隆史さんの作品
「走れ!忍者」
流し撮りの応用で背景の色を混ぜる
滋賀県を走っていた忍者列車。木立の間を走行するところを流し撮り(進行方向に追いながら1/8秒などのスローシャッタ―を切る手法)したことで背景の空と樹木が溶け合い幻想的な色の背景になりました。ふつうは水平に流しますが、この場合は広角レンズ使用のためか少し()を描いてメリーゴーランドのように描写され、忍者のラッピングと相俟(あいま)って面白さが倍加(ばいか)しました。
成嶋則之一さんの作品
「列車の主張」
望遠系レンズで色を重ねてカラフルに
夜のプラットホームに停車中のカラフルな車輛(しゃりょう)がさまざまな色の帯となって表現され、独自の視角の発見で斬新な鉄道風景を創り出しています。望遠系レンズによる縦位置撮影に加え、f8という深い絞り値の使用も作品の表現意図に合っていたと思います。色彩を強調するためにあえて夜間を選ばれたことや、ロケハンや三脚使用などの周到な準備にも敬意を払いたいと思います。
松井秀美さんの作品
「虹を紡ぐ」
クモの糸から虹色を生み出す
クモの糸が作り出すアート写真。クモの巣が逆光位置にあり、その背景が暗い時にこうした映像が得られます。マクロレンズを使用し、絞り値は光の状況や虹色の発生具合によってコントロールしますが、作者は100ミリマクロの絞り開放f2.8で撮影し、大きなボケによる美しい“虹”を画面いっぱいにフレーミングして成功しています。太陽光と小さな生き物が作り出す天然の色。タイトルのセンスも抜群です。
井上由紀夫さんの作品
「光跡」
花火でオリジナルのアート写真に挑戦
花火撮影は元々がカラフルな題材ですが、工夫を凝らして自分にしか作れないアート作品にするのも面白いもの。作品は開花するタイミングに合わせ三脚に付けたカメラを回転して得られた長時間露光作品。縦の白いラインは打ち上げ時の光跡です。仕上がりイメージの予測は難しく試行錯誤するほかありませんが、その美しい色彩と形は独自性に満ちていて花火撮影の楽しさを広げてくれることでしょう。

掲載した作品は、第28回総合写真展の入賞作品から、解説上の参考例として板見浩史先生に任意で選出していただいたものです。
作者の皆様には、この場を通じて厚く御礼申し上げます。