この総合写真展には毎年たくさんの応募作品が応募されてきます。大きく分けると「自然風景(草花も含む)」「動物や小さな生き物」「都会や人工的な風景」「人物のスナップやポートレート」など。さまざまな個性の審査員の眼を経て勝ち残ってきた入選作品は、写真上達をめざす方々にとって基本的な表現力を備えたとても良いお手本ともいえます。ああこんな写真を撮ってみたいなあ、自分だったらこんなふうに撮りたい…など、ただ眺めるのではなく自分の興味と関心に引き寄せて鑑賞・分析することによって、あなたの写真表現力をさらに高めてくれるに違いありません。ご一緒にこれらの作品から上達と入選のためのヒントを勉強していきましょう。総合写真展 審査員板見 浩史先生

色のワンポイント効果を活かす

同系色の中の反対色(補色)あるいは際立つ色彩の点景は鑑賞者の視線を強く誘います。作者の表現したいポイントそのものであったり、主要被写体までの導線であったりと、画面の中で重要な働きをしてくれます。もちろんすべての写真がそうしたポイントに依存しているわけではないものの、画面内における色や形や光といったポイントの力をふだんから意識しておくことは重要だと思います。

横江光代さんの作品
「いつもありがとうございます!」
無彩色の中の黄色のインパクト
可愛い小象と飼育員さんの礼儀正しいご挨拶。その微笑(ほほえ)ましい瞬間を本当に良いタイミングで写し止めたものです。象の姿も仕草も良く暗いバックから浮き上がって見えるのですが、画面のほとんどが黒とグレーの無彩色が占めています。その中にあって唯一の色彩ポイントが目を惹く黄色、飼育員さんのシャツ。もっとも見せたい小象の表情まで鑑賞者の視線を誘う最適な役割を果たしてくれました。
野田光治さんの作品
「路地裏の幻」
異国の街で創り上げた幻想世界
異国の路地裏でふと現れた真っ赤な傘。モデルさんを使っての演出作品かとも思われますが、それも写真の楽しさのひとつ。周囲のやや暗い空間の出口に現れた“赤い傘”は信号の赤と同じ理由で、明瞭な視認性(しにんせい)をもって見る者に迫ります。近くの壁が反対色の青ということも効果的。心理面と視覚面の両方を活用して自分の世界を映像化した作者の努力を評価します。
相川頼之さんの作品
「身支度」
伝統文化への個性的なアプローチ
極端(きょくたん)に省略化された狭い空間の切り取りで、芸妓さんの化粧姿を個性的な作品に仕上げました。大きく取った黒の部分に白い顔と赤い唇を配し、さらに初穂飾りという地味な色を加え、新年の季節感を表現した意図を感じます。鏡の中に片目片眉しか見せないという思い切った撮影手法から作者の強いチャレンジ精神が伺えるように思います。
三田隆史さんの作品
「水面の妖精」
緑に映える“白一点”の妖精
清楚なコサギの姿を、タイトルどおり神秘的かつファンタジックな雰囲気で写し取っていて感心。清らかな環境に恵まれた撮影地を発見したことも幸いでした。獲物を狙う真剣なコサギの姿勢と、歩行によって生じた波紋と樹木の反映に染まった緑色の水面の美しさも比類がありません。紅一点ならぬ“白一点”の清冽(せいれつ)な色彩コントラストが、この作品の最大の持ち味です。

掲載した作品は、第28回総合写真展の入賞作品から、解説上の参考例として板見浩史先生に任意で選出していただいたものです。
作者の皆様には、この場を通じて厚く御礼申し上げます。