画面構成には、構図に加えて被写体の構成要素や奥行きや色彩配分、明暗、動きなどさまざまな要素が含まれます。主題となる被写体(主役)をよりいっそう強調するために魅力的な背景や名脇役たちを取捨選択し画面の中で活かしたいものです。総合写真展 審査員板見 浩史先生

生き物・自然風景を例に考える

吉田博己さんの作品
「優雅」
狭いフレーミングで切り取った美しさ
岩に囲まれたオシドリの優雅な姿を額縁のような印象でうまく捉えています。柔らかな光の下で、また狭い空間の中でこそ羽根と表情が克明に描写され美しさが際立ちました。動きによって発生した水の輪を効果的に活かしたことも成功の秘訣です。警戒心の強い鳥だけに、よく恵まれた場所で撮影できたものと感心します。
中曽弥正弘さんの作品
「軽快な舞」
翼の形が生む動感と安定感
敏捷(びんしょう)な動きの瞬間を捉えたカワセミの作品としてはあまり見ることの少ない優美なポーズです。光あふれる爽やかな空間の中にこそふさわしい表現だと思います。逆光に透けた羽根の美しさも際立っています。左側の枝とのバランスも良く、伸ばした羽根の方向と嘴(くちばし)(視線)の方向とがそれぞれの対角線でクロスしていることもあって、大きな動きにもかかわらず画面の中で安定感を生んでいます。
今井美光さんの作品
「静寂の響き」
暗い水面に白いリズムを刻む
白骨のような枯れ木が佇立(ちょりつ)した沼の幻想的な雰囲気を、適切な露出設定でうまく再現していると思います。微妙に異なる背後の森の陰影が水面に映り込んで、重厚な中に白い木々がリズミカルに浮かび上がりまるで視覚的な音楽のようです。ただし広く取った画面下部まで木々の存在が支配しきれているかというとそうともいえず、暗い部分の上下の案分を一考すればさらに上位入賞したかもしれません。

人物・群像を例に考える

空閑正義さんの作品
「光る道」
輝く道を生かして人生を暗示
少年が自転車で行き過ぎる日常的なシーンを捉え、人生をさえ思わせるような暗示的な作品に仕上げていて感心しました。成功の要因は、光線状態を生かした細部の省略と縦位置構図です。逆光に輝く道が強く長い直線となって、少年を主人公とした短編ドラマのワンシ-ンをつくり上げています。上部の輝く夕陽は日常の描写そのものですが、過度に明るい部分は鑑賞者の目を惹き過ぎる場合があります。もう少し割愛すると、見る者が少年に感情移入しやすくなったのではないでしょうか。
早川公人さんの作品
「禍に勝つ(活)!!」
主役を引き立てる脇役の役目
同時代を生きる人々の気持ちを本気で写真に込めたような印象があります。主役を引き立てる脇役としての3人の存在が大きな役割を果たしています。右の二人は顔もわからないほど強烈な滝の水を浴びていて、それに続く3番目の男性が主人公。左奥の男性は一見邪魔なようでいて、主人公を次の移動に誘う役割として効いています。シンプルな画面構成だけに、一人の表情の良い瞬間を捉えて効果を上げました。
木戸和光さんの作品
「ポニーの機関士さん和み」
3人の視線で画面の中心を作る
憧れのSLとその機関士さんに質問する少年の内面が伝わってくるような魅力があります。手に持つのはサイン帳?それとも時刻表?3人の機関士の視線が少年の手元を中心に注がれていて、画面の中心を構成しています。機関室や窓と銘板などでSLであることは十分にわかりますので、もう一歩踏み込んで3人の表情を大きく取り入れると、さらに微笑ましい状況を伝えることができたと思います。
島林大祐さんの作品
「隠し砦の十白人」
異色の群像で構成した面白さ
舞台の楽屋で化粧に余念がない役者さんたちの真剣な表情がそれぞれに魅力的です。すべてをあからさまにせず、切り詰めた露出で暗部を強調し陰影の効いた空間の中で闇から人物を浮き上がるように配置したところなどもうまい見せ方だと思います。ただ、この人数で良かったか、もう少し減らしてそれぞれの存在感をより高めたほうが良かったか、は意見の分かれるところかと思います。画面中央上の人物をメインにして左と下の5~6人でまとめても、また違った印象の作品になりそうです。

鉄道・建築物を例に考える

澤田節夫さんの作品
「朝焼けの輝くとき」
長い鉄路を縦位置で行かす
タイトル通り朝焼けを背に近づいてくる始発列車と思われます。超望遠レンズによる高いポジションからの撮影なのでずっと先の線路まで見通すことができ、真正面からの端正な撮り方と相まって清々(すがすが)しい鉄道風景に仕上がりました。薄く積もった雪も美しい調子で再現されピンクに色に染まった鉄路と良くマッチしています。上部のカット位置も適切で、明るい空を入れすぎなかったため画面全体が落ち着いた色調で再現され、最大の魅力である朝の空気感をとても良く出しています。
坂井和友さんの作品
「復興への架け橋・新阿蘇」
対角線を生かした復興のイメージ
一見、列車のように見えましたが、熊本地震で崩落した阿蘇大橋の復興した姿とのこと。虹のように輝く橋の外観のハイライト部を、切り詰めた露出設定でうまく強調しています。対角線上に展開して長さをフルに見せ、画面右下から左上へと駆け上るような効果を上げています。新しく蘇(よみがえ)った名所をいち早く撮影し自分だけの風景をつくり上げたという点で、とても好ましい作品だと思います。

掲載した作品は、第25回総合写真展の入賞作品から、解説上の参考例として板見浩史先生に任意で選出していただいたものです。
作者の皆様には、この場を通じて厚く御礼申し上げます。