撮影と応募の前にぜひ覚えておきたい― 上位作品に見る上達と上位入賞のための表現ポイント

 そこに被写体があります。機材を選び、光を選び、構図を作り、明るさを考えてシャッターを切る。やっていることはみなさん同じことです。それでも作品には違いがでます。見る人に思いの伝わる写真があります。目が止まる写真があります。 写真を撮るとき、そして選ぶときに、ちょっと意識してみるといいことは何か。上位作品を見ながらいくつかのポイントをまとめてみました。

総合写真展 審査員 川合 麻紀先生



Point8 映り込みを意識する

、窓や水面、何かの表面などに、別の絵柄が反射すると、実物と写り込みが混在した絵柄を作ることができます。実物が素敵なのはもちろんですが、絵柄が混在することでオリジナリティーが出しやすくなりますし、不思議な世界を創造することも可能です。

宜保富美子さんの作品「車窓の花」

 宜保さんの作品は、ホームから見た鉄道と線路のカーブ。これから出かけるような気分になれる作品です。周りに咲いているのは花桃(はなもも)でしょうか。濃いピンクの花々が車体や車窓に映ってワクワクするような春の旅のイメージになっています。電車を撮るにしても、写り込みを主体にした構図をとることで人と違った視点が明確になっています。

市橋康治さんの作品「池の作画家」

  映り込みといえば、イメージしやすいのは水面かもしれません。市橋さんの作品は、錦鯉のいる池。映り込んでいるのはおそらく藤の花々だと思います。実際の花は構図の外にありますが、映り込みだけで花や葉の色彩が追加され、季節がわかるようになっています。鯉が泳ぐことで水面が揺らぎ、そのまま映っているのとはまた違った美しさが生まれます。

大友誠さんの作品「正夢」

 大友さんの作品は、ショーウインドウの中をスマホで撮影されたもののようです。笠をかぶった踊り子たち、犬、ビル、そしてご自身と、どれがショーウインドウの中で、どれが映り込みなのかわからなくなっていて、不思議さ満載です。ショーウインドウは写真のモチーフとしてよくあるのですが、そのままを撮るとショーウインドウを飾り付けた人のデザイン力だけになってしまいます。どのように映り込みや実際のものと組み合わせて表現するかがオリジナリティーにつながります。

三好茂さんの作品「京風情」

 映り込みはいろいろなところにあります。三好さんの作品は、なんとテーブルへの映り込みです。画面半分テーブルにするという大胆な絵柄です。映り込みを入れながら部屋の全体を広くフレーミングすることで、客観的な視点になり不思議な空気感を演出できました。意識して見渡してみると、いろいろなところに映り込みを発見できるはずです。雨の日に水たまりを覗いてみてもいいですね。

Point9 窓越しの景色

えば窓から外を見たときに、外の景色が綺麗だと感じたとします。そこで、写真を撮ろうとします。皆さんは、外の景色だけを撮りますか?それとも、窓を含めて撮るでしょうか。どちらが正解ということではなくて2通りの撮り方があることを知っていると表現が広がります。

鈴木弘さんの作品「夕暮の彩」

宮島幸夫さんの作品「窓際」

 窓も室内も構図に入れながら撮影すると、窓はまるで額縁のように景色を縁取り、一枚の絵のような効果を生み出します。室内の暗さとの差で、外が明るく、まさに外のシーンが主役であるような感じが出ます。
 風景はちょっと遠くて、シーンの中にいるというよりは、ちょっと離れたところから見ているような印象です。窓があることでクリアに見えないのも雰囲気があります。室内がうっすら見えると、そこの空気感や気配も追加されて写真に深みが出ます。
 鈴木さんの作品は、室内部分を広く構図に入れ、うっすらと見える感じがなんとも言えない雰囲気を醸(かも)し出していますし、宮島さんの作品は室内から眺めている感じが出ることで、春を楽しむ人々を見つめる宮島さんの思いが伝わってきます。

Point10 レンズの力を再認識する

段使っているレンズですが、どうしても好きなレンズや焦点距離が決まってくると思います。それは自分らしさでありいいことでもあります。もしマンネリ化したなと思ったら、レンズの焦点距離を変えてみるのも一つの方法です。
 ここでご紹介するのは魚眼レンズです。レンズセレクトとしてはちょっと極端ではありますし意図を持って使わない限り、使いこなせないレンズでもありますが、例としてはわかりやすいと思います。

吉行秀和さんの作品「島からの贈り物 輝きの刻」

 吉行さんの作品は、アダンの木の下に潜り込み、魚眼レンズで海に輝く太陽を捉えています。レンズによって極端にアダンの木がデフォルメされ、ぐにゃっと画面を覆うような形の面白さが出ています。

渡邉貞夫さんの作品「風の舟唄」

  渡邉さんの作品は、風をはらんで広がる帆の丸みが、青空に美しく映えています。水面を見ると真っ直ぐではなくて、くぼんでいるので、魚眼レンズを使っていることがわかります。帆の形は見た目とはちょっと違うとは思いますが、写真で見るときの印象は強くなります。魚眼レンズは超広角レンズでもあるので、ただ使っただけでは被写体は小さく写ってしまいます。近づいて撮影されていることでレンズの特徴を活かしています。

最後に

4回にわたって、「再確認すると、ちょっと視点が変わるかも?」という項目を取り上げてみました。
普段撮影する時、困ったりあるいはマンネリになったら、少しだけでも思い出していただけたら嬉しいです。
それでは、皆さんの素敵な作品に出会えるのを楽しみにしております。

※掲載した作品は、第23回総合写真展の入賞作品から、解説上の参考例として川合麻紀先生に任意で選出していただいたものです。
 作者の皆様には、この場を通じて厚く御礼申し上げます。