撮影と応募の前にぜひ覚えておきたい― 上位作品に見る上達と上位入賞のための表現ポイント

 そこに被写体があります。機材を選び、光を選び、構図を作り、明るさを考えてシャッターを切る。やっていることはみなさん同じことです。それでも作品には違いがでます。見る人に思いの伝わる写真があります。目が止まる写真があります。 写真を撮るとき、そして選ぶときに、ちょっと意識してみるといいことは何か。上位作品を見ながらいくつかのポイントをまとめてみました。

総合写真展 審査員 川合 麻紀先生



Point6 風景と人々、スケール感の演出

り取られた景色や空間は、写真としてみたときに、その広さ、大きさ、奥行き感などを感じにくい場合があります。そこの場所に行ったことがある方が見ればわかるのですが、そうでない方にはわかりにくいのです。見る人にわかりやすくするには、その空間に、大きさを比較できるようなものを写し込むといいと思います。
例えば、人や、家屋、車などです。人がいることでスケール感がわかりやすくなりますし、そこにドラマが生まれることがあります。もし写真を撮る時、作った構図の中に人がいたのであれば、それを邪魔と思わずにその状況を生かして更にスケールアップした風景を捉えてみるのもいいと思います。
風景、花風景などの撮影では、人がいない方がいいとされる場合もありますので、その場合は人がいない時間帯や人がいないタイミングまで待って撮影しましょう。

石曽根正志さんの作品「田んぼの季節」

 石曽根さんの作品では、奥に山、手前に桜の木があります。それらだけでも季節感や山の雄大さを感じられる作品です。その構図の中に人物が入ることで、桜の樹木の大きさや、遠景までの奥行き感が強調されています。

青木金夫さんの作品「映る昭和」

  青木さんの作品は、水辺の紅葉の風景で、実物と写り込みが半々くらいの構図、光の陰影が見事な景色です。そこに観光客の人々が入ることで風景の大きさが強調されるとともに、黒い部分に彩りが追加されてより印象的になっています。ここに立ったら深呼吸したくなるだろうなと、そこに自分がいるような気持ちになれます。

嶋﨑直さんの作品「新雪の朝」

 涸沢(からさわ)の紅葉の景色に、テント場を含めて構図を作ったのは嶋﨑さんの作品。涸沢(からさわ)の風景だけでも十分作品として成り立ちますが、テントが入ることでスケール感が出たとともに、山に登る人々の想いも感じられる作品になっています。

Point7 形の美しさを生かす、たくさんの面白さを捉える

写体を探すとき、構図をどうしようかと考えるとき、フォルムを意識してみると、ふと目が止まったりピタッと構図が決まることがあります。

渡辺睦男さんの作品「カマキリの子」

 渡辺さんの作品は、小さなカマキリが主役ですが画面の中にとても小さく配置されています。カマキリだけを意識しているとなかなか作れない構図ですね。砥草(とくさ)のフォルムを生かした構図作りで、パッと見たときにカマキリに気がつかないかもしれませんが、形の面白さだけでも気になる作品になっています。この構図によってカマキリの小ささも表現できています。

奥谷琴子さんの作品「冬の風物詩」

  奥谷さんの作品は、お素麺(そうめん)を作っているところですね。こちらはフォルムの美しさと、数の面白さが共存しています。たくさんの緩やかなドレープを描くそうめんのラインはとても魅力的。お天気があまり良くなさそうですが、それが気にならない美しい光景です。

清水洋嗣さんの作品「人・人・人」

 清水さんの作品は、すごい人数での藁葺き(かやぶき)屋根の吹き替え作業の様子。吹き替え作業も今ではなかなか見られない光景ですが、お天気も良く、撮影日和です。さらにこの作品には、屋根を覆うほどの人々の動きや形の面白さがあります。同じものの数がたくさんある感じ、というのは、それだけで目を引きますし、被写体によってはパターン的な美しさが出ることもあります。

※掲載した作品は、第23回総合写真展の入賞作品から、解説上の参考例として川合麻紀先生に任意で選出していただいたものです。
 作者の皆様には、この場を通じて厚く御礼申し上げます。