撮影と応募の前にぜひ覚えておきたい― 上位作品に見る上達と上位入賞のための表現ポイント

 そこに被写体があります。機材を選び、光を選び、構図を作り、明るさを考えてシャッターを切る。やっていることはみなさん同じことです。それでも作品には違いがでます。見る人に思いの伝わる写真があります。目が止まる写真があります。 写真を撮るとき、そして選ぶときに、ちょっと意識してみるといいことは何か。上位作品を見ながらいくつかのポイントをまとめてみました。

総合写真展 審査員 川合 麻紀先生



Point1 人物写真 ストレートな写真の良さ

ンテストとなると、目に付きやすいのは、「ちょっと変わった感じ」だったり、「特別なシーン」であったりすることも事実です。とはいえ、たくさんの写真の中でも「定番」の写真の力は強いと感じます。最近は、肖像権の問題を恐れて人物写真が少なくなってきましたが、人物写真、ポートレート作品の中には心を打つものが多くあります。

藤田隼輔さんの作品「Moko」

 藤田さんの作品は、正統派なポートレートフォトです。旅先で撮影されたのでしょうか。出先で、このような背景、このような光を選ぶとは実力のある方だなと思います。黒い背景に、柔らかい光で浮かび上がる横顔は、とても穏やかで静かな空気感ですが、この方の人生を想像させる力もあります。シンプルに向き合ったからこその力強さです。

村木眞樹子さんの作品「土匂う喜びの春」

  村木さんの作品も、人物とストレートに向き合っていますが、印象はかなり違います。この人物と村木さんの交流が感じられ、まるで今、自分がお話しているような気持ちになります。周囲には生活がそのまま写っていて、より身近に感じる人物写真に仕上がっています。

鈴木明久さんの作品「ゴーキゲン!!!」

 鈴木さんの作品も、被写体の捉え方としては定番系です。大きなお風呂のようなので、旅先での一コマだと思いますが、子供の可愛さを前面に出したストレートな捉え方です。頭のタオルは大人の演出ですけど、これもまた可愛らしい。きっと大きくなって本人がこの写真を見たら、楽しい会話が生まれそうです。

 人を撮ることが苦手な方もいます。ちょっと撮ってみようかなと思ったら、ご自身のセルフポートレートから始めてみてはいかがでしょうか。過去、多くの写真家がセルフポートレートを残しています。自分が被写体なら、いろいろ気がつくところも多く、試行錯誤できるはずです。

Point2 自分の日常は非日常

常の写真、実際にはたくさんの方が楽しんでいらっしゃると思います。スマホの普及でまめに撮影されている方も多いはずです。とはいえ、写真愛好家の方が、自分の被写体として、日常を選ぶかどうかはまた別の話です。日常に目を向け、それを映像化することは、特別を被写体にしている人にとっては意外とハードルが高いようです。おそらく、日常生活は見慣れていることなので、心が動きにくいのかもしれません。あるいは、自分をさらけ出すことは恥ずかしいと感じる方もいるかもしれません。
 写真を見る立場からですと、自分以外の人の生活、日常は、とても興味があります。生活は人それぞれ、地域性も出ますし、今を感じられますし、おもしろいことだらけです。ある地域では普通のことも、他の地域では珍しいこともあります。身近な方なら撮りやすいはず。ぜひ撮影してみてください。

Point3 被写体ブレ、手振れを積極的に取り入れる

いているものを撮る時、動きを止めるのか、それともブレで表現するのか考えると思います。
スローシャッターを使いブレを生じさせてみると、目では見られない写真ならではの映像を作ることができます。
水の流れをブレで表現するのは、比較的一般的でわかり易いかもしれません。あとは、鉄道や車などの動きに合わせてカメラを振って撮る「流し撮り」もあります。あるいはあえてカメラを動かし、動いてないものを動かして見えるようにしてしまう方法もあります。

早川公人さんの作品「晩秋の円舞」

岩下柊さんの作品「止まる瞬流れる時」

 早川さんと岩下さんの作品は、被写体は違いますがカメラを三脚に固定してスローシャッターで撮影することで表現できるブレの描写です。動かない部分は普通に映り、動いているものは流れるようにブレを生じさせることで、動感を表現することができます。ちょっと透けた感じになったり、色が溶け合う感じも魅力的です。

片切充さんの作品「湖畔を疾走」

  片切さんの写真は、馬の速さや風を感じます。動きに合わせてカメラを振って撮影するのが「流し撮り」です。動いているものの動きは止まりますが、代わりに背景がブレて走っている感じが伝わってきます。

細川敏祐貴さんの作品「踊るロンドン」

 細川さんの写真は、タイトル通り踊っている感じがしますね。こちらは人物の動きに完全に合わせるわけではなく、自由にカメラを振ることで全体がブレ、まるで雨の中、街も人も踊っているようです。細川さんの写真のように、全体がブレている写真は、失敗だとか、ダメなものと認識している方も多いようなのですが、ご自身がお持ちのイメージと合っていれば、ブレも表現の一つになります。むしろブレがあるほうが伝わる気持ちもあります。

※掲載した作品は、第23回総合写真展の入賞作品から、解説上の参考例として川合麻紀先生に任意で選出していただいたものです。
 作者の皆様には、この場を通じて厚く御礼申し上げます。