写真上達のためにぜひ覚えておきたい コンテスト上位入賞に向けた7つのポイント

いまやカメラは急速に進化を遂げていますが、たとえどれだけAI化やロボット化が進んでも、それらを駆使して素晴らしい写真を撮るのは人間に残された最後の仕事です。いや“仕事”というよりは“楽しみ”と言い換えたほうが良いでしょう。
“良い写真”を撮り、その素晴らしさを享受できるのは人間の特権でもあります。そして人に感動を与える写真を撮るには、いくつかの基本要素やテクニックも大切。そのポイントを学んで、上達とコンテストの上位入賞に役立てましょう。

第22回 総合写真展 審査員 板見 浩史



Point6 シャッターチャンスをどう掴むか―決定的チャンスは予測して待とう

の有名な画家レオナルド・ダビンチの言葉に「幸運の女神には前髪しかない」というのがあります。つまり、チャンスは通り過ぎる前に掴まないと、後からでは掴めない、ということで、これは写真でも同じ。日本では、果報は寝て待てと言いますが、写真は寝てても傑作は撮れません。早朝の自然風景などは言うに及ばず、スナップや祭りの写真でも事前準備と予測は必要です。特に初めての祭りなどを撮影する際は、予備知識の有無で結果に大きな差が出ることがあるので必ず行列のコースや行事の要点くらいは把握しておきたいものです。インターネットで調べておくだけでもずいぶんと参考になります。
 また実際の撮影の直前においては予測力も必要になります。たとえば流鏑馬(やぶさめ)行事などは数回見ているうちに矢を射るだいたいの場所やタイミングも分かるようになります。コンティニュアスAFモードで狙ったり、追いきれない場合はマニュアルに切り替え、置きピンで狙います。野鳥撮影の場合はその種類の生態や行動パターンを覚えて、予測して待ちます。これは子供の撮影でも同じで、日頃からよく観察しておくとよいでしょう。いずれにしても、対象に興味を持ち好きになることです。昔から「好きこそ物の上手なれ」と言われる所以です。

松田偲さんの作品 「桜流鏑馬」

 女性の武者が颯爽と駆けて来て弓を射る瞬間を絶妙のタイミングで写し止めています。矢を放った瞬間がベスト、という人もいるでしょうが、流鏑馬の写真は馬も含めた全体の美しさが評価の対象。馬脚が一本だけ地について他は浮いているこの瞬間がベストだと思います。矢を放った瞬間には馬脚が乱れているかもしれません。ピントも正確に来ていますし、武者の表情にも厳しさが感じられます。桜は入れながらも、雑然としがちな周囲の整理もうまくいっていますね。

長谷川英雄さんの作品 「ゲット」

 まさに決定的な捕食の瞬間をうまく捉えました。動物の写真と言えども、大事な基本は目にピントが来ていることなのですが、喰う者と喰われる者の両方にしっかり合っているのはさすがです。水中に飛び込んで離水する瞬間の翼の形、飛び散った飛沫、いずれもシャープに描写されていて、優れたネイチャードキュメントと言えるでしょう。

杉浦和行さんの作品 「青春」

 可愛らしい少年(少女?)野球の祝勝シーン。青空に赤い野球帽が舞い上がった瞬間をタイミング良く切り撮っていますね。帽子の点在も良いバランスです。ちょっとタイトなフレーミングで、下からあおり気味のアングルで迫ったことが功を奏しました。そのため青空の広さが充分に表現でき、空に向かって上げた子供たちの手と身体が伸び伸びと表現できました。特に背番号10番のおチビさんが可愛らしく、良いポイントになっています。

Point7 色彩の力を活用する―色は心理に働きかける重要な力

ともとモノクロ―ムから始まった写真の世界は、カラーフィルムの登場を経て本格的なデジタル時代を迎え、いまや百花繚乱の趣があります。カメラやモニターやプリンターを通して、色相・彩度・明度といった色彩コントロールが個人で自由にできる時代。
 写真における色彩の表現効果はとても重要です。つまり「見たままの色の再現」から「自分か感じた色」あるいは「表現したい色」へと自由に選べるようになったからです。また色彩と人間の心理には深い関係もあります。一般的に、赤やオレンジや黄色などは熱い・温かい・明るいなどの心理を、反対に青や緑色などは穏やかでクールな心理を、それぞれ誘発すると言われています。たとえば花畑を写すにしても、画面の中の赤系と青系のどちらの花の割合を主にするかで、見る人の心理に訴えかけるものは違ってくる、ともいえるでしょう。被写体の色選びや画面の色彩構成も表現のひとつとして活用しましょう。
 しかしながら、最近審査をしていて感じるのが彩度やコントラストを上げすぎた作品。極端にそれらを強調しすぎて色飽和を起こしたものやグラデーションがつぶれたものもよく見受けられます。一度上げすぎるとそれが普通になってしまい後戻りできにくくなるようです。心象的な狙いの作品なら別ですか、不自然な色のためにせっかく構図もピントも良いのに入選できない作品もあります。色彩にこだわることは大事ですが、“過ぎたるは及ばざるが如し”を心がけましょう。

西川裕希さんの作品 「緋影」

 実際にはあり得ないほど強調された色彩ですが、この場合は心の中の光景(心象風景)としてとても印象的な作品に仕上がっていると思います。面白いのは彼岸花本来の燃え上がるような赤い色が背景にあり、花そのものはシルエットとなって表現されている点です。逆転の手法が洒落ていて、現実の世界を借りながら「彼岸の光景」を現した作者の創造性に感心しました。まさに色彩の心理効果をいかんなく発揮した作品といえるでしょう。

藤田吉夫さんの作品 「秋水彩」

 水面に映った光景を主に作画された、ちょっと絵画を思わせるユニークな作品です。色彩は少々強調されていますが、均一な美しいさざ波のために油絵の細かい筆跡のように再現され、上品な印象を与えてくれます。空を反映した下部の水面の部分が穏やかで落ち着いた色調になっていて、錦秋の派手な色彩とうまく調和が取れています。

宮地郁雄さんの作品 「うみてらす14」

 今はやりの工場夜景。昼間は煤けたように見える無機質の工場群が、夜は一転、宝石箱をぶちまけたようなゴージャスな風景に変わるところが魅力です。そうしたイメージをさらに強調するために、温かみのある黄色い色調を何らかの方法で少し加えられたのではないかと思います。光点を膨らませコントラストを弱めるためにソフトフィルターも使用されたのかもしれません。いずれにしても人間の営為を肯定的に捉えた心安らぐ作品として、好ましい色調処理でしたね。

※掲載した作品は、第21回総合写真展の入賞作品から、解説上の参考例として板見浩史先生に任意で選出していただいたものです。
 作者の皆様には、この場を通じて厚く御礼申し上げます。