写真上達のためにぜひ覚えておきたい コンテスト上位入賞に向けた7つのポイント

いまやカメラは急速に進化を遂げていますが、たとえどれだけAI化やロボット化が進んでも、それらを駆使して素晴らしい写真を撮るのは人間に残された最後の仕事です。いや“仕事”というよりは“楽しみ”と言い換えたほうが良いでしょう。
“良い写真”を撮り、その素晴らしさを享受できるのは人間の特権でもあります。そして人に感動を与える写真を撮るには、いくつかの基本要素やテクニックも大切。そのポイントを学んで、上達とコンテストの上位入賞に役立てましょう。

第22回 総合写真展 審査員 板見 浩史



Point4 光の美しさと効果を活かす―見慣れたものを宝石に変える光の魔術

真術の産みの親であるフランス人、ニエプスはその方法を「ヘリオグラフィ」と名付けたそう。「太陽の画」あるいは「太陽の光で描く」といった意味でしょうか。そんなたとえを上げるまでもなく、写真を生かすも殺すも「光」次第。写真の基本とされる順光(被写体に対して撮影者と同方向から射す光)のほかにも、半逆光(被写体に対して斜め後ろから射す光)や、真逆光(被写体の真後ろから射す光)、サイド光(被写体の真横から射す光)など、被写体の周囲には実にさまざまな方向からの光があります。 
順光は無難に写りますが、陰影ができない代わりにフラットで面白みに欠ける作品にもなりがちです。他の三つの光は、不意に光がレンズに入って画質を損なうリスクはあるものの、立体感や陰影に富んだドラマチックな描写が得られるというメリットがあります。
 最近のレンズはコーティングも優れており、逆光にも強くなってフレアなども出にくくなっています。画質リスクを恐れずに、ファインダーを覗いて「いいな!」と思ったら、まず撮っておくべきです。逆光に浮かび上がる被写体は、美しいラインライト(輪郭光)に縁取られて宝石のように輝いて見えるはずです。

佐藤伸一さんの作品 「寒立馬」

 青森県尻屋崎の寒立馬、風雪に耐えながら草を食む姿を実に美しく写し撮っていて感心します。暗い背景を選び真逆光で撮影したことで、ラインライトに縁取られた馬体が見事に浮き立ち、劇的なシーンを生み出しました。吹き上げられた粉雪の粒子の描写も絵画のように美しく、大自然と野生馬の生のダイナミズムを存分に伝えてくれます。

酒井工さんの作品 「冬の日差し」

 近年のコンテストによく出てくるようになった観光地の囲炉裏端。ある時刻になると煙を介して窓からの光の帯が美しく、カメラマンの写真ゴコロをくすぐるようですね。すでによく知られた“舞台”だけに、独自の写真的魅力を加味するとなると、女性の動きの捉え方だけに絞られます。火箸を伸ばした瞬間をタイミング良く捉えていると思います。

片島京子さんの作品 「鳥達の朝」

 朝霧の湧く湖を美しい黄金色の光で捉えました。杭に止まった一羽のカワウのシルエットの位置もバランス良く画面を引き締めています。羽根や首の仕草も注意深く観察して、良い形になった瞬間を写し止めています。画面右上からの逆光を待った甲斐がありましたね。周囲の鴨の群れが、もう少しうまい具合に点在してくれたらさらに良くなったでしょう。

Point4 光の美しさと効果を活かす―見慣れたものを宝石に変える光の魔術

真を撮ろうと思った時、真っ先に考えるべきこと。それは何を主役にするか、何を脇役に置くか、舞台はどこまで入れるか…。画面構成とは写真の中の構成要素を決めること、フレーミングはそれらが効果的にまとまるための舞台の広さを決めること、と考えても良いでしょう。
必ずしもその順番に進めるわけではなく、写真は現実の瞬間把握ですから、撮る対象によってはいきなり両方を同時に決めていく場合もあるでしょうし、最後の詰めはフレーミングで微調整、というケースも多いかもしれません。人物写真のベテランはシャッターを切りながら相手との間合いを詰めていったり背景を選んだり、また風景写真のベテランは歩いている途中で、ふと立ち止まったところがカメラを据える場所かもしれません。
 要は、自分がこう撮りたいというイメージが絶えず頭の中にあれば、また自分のよく使うレンズの画角が定まっていれば、仕事は早い、ということ。また、現場でズームレンズを伸ばしたり縮めたりしている時間が長いほど傑作のチャンスを逃してしまう、ということだけは間違いないようです。

下條良菜さんの作品 「バブルリング」

 この作品の主役はもちろんこのシロイルカで、脇役はダイバーさん。フレーミングはやや狭いけれど、それだけに被写体の持つ魅力と面白さが作者の感動と共に伝わってきます。正確なピント、適正な露出、光の美しさ、イルカとダイバーそれぞれの傾き、バブルリングが出た瞬間のシャッターチャンス、青赤白の簡潔な色彩センス等々、ここで上げた優れた写真の要素がみんな詰まっていますね。それもそのはず、第21回総合写真展の内閣総理大臣賞受賞作品でした。

水内和義さんの作品 「初冬の訪れ」

 画面構成の妙は得てして主役とその背景の関係で語られることが多いけれど、この作品は一風変わっています。前景に柿の木と実の大きな広がりを持ってきて、その隙間から後方の阿弥陀堂のような建物を小さく見せています。このアングルを見つけ出した発見力も大いに買いたいものです。個性的な写真を撮ろうという作者の努力も伝わってきます。枝の空間のもう少し中央に建物を持ってくることができたらさらに良くなったと思います。

松森誠二さんの作品 「ラベンダーの香り」

 おなじみ、富士山とラベンダー畑。おまけに不思議な形をした傘雲まで出て、オールスター級の主役が三つも登場しました。しかしながら稀少性でいえばやはり紅色に染まった見事な傘雲が主役ということになりそうです。ラベンダーの一株を手前にうんと大きく撮り込んだことで、画面に富士と傘雲とを結ぶ巨大な三角形の空間が生じ、作品のスケール感をいっそう大きなものにしています。

※掲載した作品は、第21回総合写真展の入賞作品から、解説上の参考例として板見浩史先生に任意で選出していただいたものです。
 作者の皆様には、この場を通じて厚く御礼申し上げます。