写真上達のためにぜひ覚えておきたい コンテスト上位入賞に向けた7つのポイント

いまやカメラは急速に進化を遂げていますが、たとえどれだけAI化やロボット化が進んでも、それらを駆使して素晴らしい写真を撮るのは人間に残された最後の仕事です。いや“仕事”というよりは“楽しみ”と言い換えたほうが良いでしょう。
“良い写真”を撮り、その素晴らしさを享受できるのは人間の特権でもあります。そして人に感動を与える写真を撮るには、いくつかの基本要素やテクニックも大切。そのポイントを学んで、上達とコンテストの上位入賞に役立てましょう。

第22回 総合写真展 審査員 板見 浩史



Point2 ピント位置を自在に使いこなす―ピンボケ・無用なブレは論外

真表現というと被写体の選び方や狙い方といった精神面のことを考えがちですが、ピントをどこに合わせるか、という問題も実は写真の表現に関わる大事な事柄なのです。ピントはカメラが勝手に決めてくれるもの、という考えは間違い。ピントは人が決めるものなのです。言い換えれば、ピント位置は、ここをしっかり見てもらいたいんだ、という撮影者の主張でもあります。
 ピントには画面の手前から奥まで全面に合わせる深いピントや、一部だけに合わせその前後をボカす浅いピントなどがありますが、前者は広角系レンズで大きい数値の絞り(たとえばF11やF16など)、後者は望遠系レンズで小さな数値の絞り(たとえばF1.4やF2.8など)で効果が得られます。近年は高倍率ズームが人気で、一本で広角から望遠までの広い焦点距離をカバーするレンズも多いので、使用焦点距離と絞り値のさまざまな描写効果を自分で確かめ、写真表現に応用すると良いでしょう。その場合の撮影モードは「絞り優先モード」が便利です。

木下徳昭さんの作品 「第九春」

 手前から画面奥までの全面にピントを合わせる「パンフォーカス」表現を駆使した作品。手前のスイセンから中間の花群、そして遠くの雪嶺まですべてにしっかりピントが合っているため画面の中のディテールをゆっくりと楽しく視線で辿ることができます。まさに“眼福”とでも呼ぶべきゴージャスな作品です。

大原忍さんの作品 「黄昏のコミミズク」

 凛々しいフクロウのポートレートとでもいえそうな作品ですね。超望遠レンズでの動物撮影は高速シャッターを使用するので被写界深度が浅くなるのは必然ですが、結果的にそれが煩雑な背景をすっきりとさせ、フクロウの存在感を際立たせてくれました。背景はどんな状況かよくわかりませんが、大口径レンズ特有の大きな丸ボケが美しく、まるで都会の中の動物たち(アーバン・アニマルズ)のような特異な表現となり、とても印象的です。

市野晃さんの作品 「京都慕情」

 舞台化粧の女性の横顔をとてもシンプルで魅力的に写し撮っています。それほど望遠のレンズではなさそうですが、開放値に近い絞りによる浅めの被写界深度で背景を綺麗にボカし、美しい横顔を浮き上がらせたテクニックは見事。背景の選択も良かったようで、グリーンから白にかけてのグラデーションが、女性の肌と紅の色に上品にマッチしています。

Point3 表現意図に合った露出を選ぶ―表現したい部分を露出補正で強調

出もまたピントと同じく、画面のどの部分に合わせるかによって見る人への訴求力が違ってきます。カメラの自動測光機能は、基本的には平均値で決定されますが、その機能ばかりに頼っているといつまでたっても上達しません。絵画の場合は煩雑な部分は暗く潰したり明るく省略したりできますが、写真はすべてを平均的に描写してしまうからです。そのためには露出補正機能を活用します。わりと多いのは、暗い部分はより暗くして煩雑な部分を見えなくしてしまうケース。反対に、暗くなっては困るところを明るく補正して見せることもあります。その両方を駆使して、画面の中で自分が最も表現したい部分を強調するのが露出補正です。
 近年のカメラの測光機能は、多くの蓄積された撮影データから演算して適正値を判断する「評価測光」システムが進化していて、かなり撮影者の意図に合った露出値を設定するようになっていますが、現実的には撮影からプリントに至るまで、人間が最終的に露出を微調整することが必要になります。

相澤兵男さんの作品 「恵みのシャワー」

 この作品の表現意図は、象の形と肌の質感、それに鼻から噴き出した飛沫の描写の面白さにあります。陽に当たった部分はかなり明るく周囲との明暗比が高くなっているので、平均測光の場合だとなかなか難しい撮影条件といえそうです。ハイライト部の調子が飛んでしまわないようマイナス側に補正するか、中央部重点測光などに切り替えて撮るべきケース。作者は逆光条件で周囲が暗くなる背景も選び、効果的に飛沫を浮き立たせ傑作をものにしました。

鈴木明久さんの作品 「Here Comes The Sun」

 愛くるしい幼児を素直に撮った好ましいファミリーフォトですね。白い部屋の壁、シーツなどがディフューザーとレフ板の役割をし、柔らかく均一な光となって子供の顔を包んでいるため、眼にもキャッチライトが入って表情を実に生き生きと捉えることができました。中央の白い部分が多いのと、内容に合わせたハイキー表現のため、露出補正はもちろんオーバー側に補正するべきケースです。

坂口恒一さんの作品 「蒸気に包まれて」

 モノクロームでの表現では白と黒しかないのでそれぞれの質感描写やグラデーションの豊かさが重要になります。この作品は大胆な構図で機関車の存在感と働く人物のたくましさをテーマにした味のある作品。露出をプラス補正すれば人物の表情は見えてきますが、煙の陰影は失われてフラットな描写になってしまうでしょう。人物を犠牲にしても、ややマイナス側に補正して煙のボリュームや存在感を強調した作者の表現法が功を奏したといえそうです。力強い鉄と柔らかい煙とのコントラストが作品の大きな魅力になりました。

※掲載した作品は、第21回総合写真展の入賞作品から、解説上の参考例として板見浩史先生に任意で選出していただいたものです。
 作者の皆様には、この場を通じて厚く御礼申し上げます。